一夜

 わたしは眠くない目を無理に閉じ、お布団へ入りました。
すると何かに呼ばれているような気がしたので目を開くと、
明るいお月様が薄もやのかかる夜空の中、まぁるい顔を出していたのでした。

「お月様を相手に夜を過ごすのは、久しぶりだな。」
わたしは思い切って暖かい上着を羽織り、窓を開けました。

 遠くで、鳥の寝言が聞こえます。冷たい空気がわたしの頬を軽くなでました。
夜中過ぎでしたので、お月様の光は黄色く、けれどもわたしの体を包む光は、
まだ青白いのでした。そしてしずかに、降り注ぐのでした。

それからわたしは、窓を閉めて、お布団の上に座りました。
そしてお月様のお顔を眺めたあと、わたしが一人ぼっちだった頃のように、
手を唇の元へ組みました。
お月様の光で、わたしの手はまるで美しい陶器のように、とてもなめらかに
見えました。

わたしはお月様の光の中で、祈りました。
いろいろなことを祈ったのです。そして、いろいろなことにごめんなさいをしました。
また、いろいろなことにありがとうをしました。 
 

お月様の光が、わたしの部屋中に入り込んできました。



私は布団から降りて、窓から外の景色を眺めました。



 空を横切る電線が、電信柱から電信柱へと続いているのが見えました。
そしてその電線は、私が子どもだった頃の太さよりずっと太く、幾列にもなって
横たわっているのでした。

それは世の中が便利になってきた証でした。
なぜなら世界を繋ぐ窓が、どの家庭にもやってきているからなのです。

けれども、美しい空を見上げることは、だんだんと
難しくなってきているようなのでした。

まだ大勢の人が、これらのことを知らずにいました。
なぜなら大勢の人は、他のことでつまづいたり、苦しんだりしている
からです。


 わたしはお布団にもぐりこみました。
そうして先ほどのお祈りも、お月様もみんな置いてゆきました。

 
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by otyou0710 | 2006-03-18 16:27 | 雑記

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by otyou0710