丸に下がり藤

またあなたの夢を見た。
今回は私よりも小さい頃のあなただった。
「ああ良かった、これなら力で負けることはない」と思った。
自分の泣き声で目が醒める。

私は寝転んだまま、自分の手を天井に掲げ、動かしてみる。
明け方の薄暗い光に浮かび上がる、白くぼんやりとした私の手。
手は、自分の意思通りに動いてくれた。
もう夢の中ではないと覚醒して、やっと一息つく。

もう何十年、こういう行為をしてきただろう。
夢から醒めて、怯え、泣き、身構え、
夢ではないと判って安堵する自分がいる。
その度に強くなりたい、早く大人になりたいと願い、手を合わせたり、
相談をしたりしてきた。

いろいろなことに紆余曲折したし、これからもするけど、私は大人になれた。
多分、同じ悩みを持つ人の為に、傍に寄り添ってもいいかと聞ける、言葉を持った。

過去に追いかけられないよう、逃げたり、目を逸らしたり、したけど、
過去が今の私を追い抜くことは、私が望まない限りないのだ。

過去の更新はしない。
あなたは過去だ。
私にとって。
過去から今の距離は、遠いか近いかわからない。
夢は、いつでも一瞬にして私に近づく。
だけど過去だ。
脳のデータだ。

過去が突如として夢に出てくることに、私は長年苦悩してきた。
ガラス1枚隔てた肉薄した夢の距離に、今後も私は怯えるだろう。
だけど動物園の檻の中の動物のように、あなたが私をその場所から何度も
私を脅かしても、過去はそこからはもう二度と出ることはないだろう。
夢が夢のままであるように。

もし、あなたにその勇気があるなら、いつでも相手になろうと思う。
現実のあなたを纏って、私に近づくがいい。
無垢な時代に、易々と踏み込まれた安易さを、今の私は持たない。
最後の最後まで、目を見開いて戦おうと思う。

私の脳と、乗り越えたい思いと、幾つもの出会いから生まれた人との関係が、
鎖のように繋いできた愛で、あなたとの出来事をがんじがらめにデータ化した。

血縁関係は今も、確たる事実として私に永遠について回る。
それならば、過去としての分別をつけよう。

私の出した答えは、私にとって、あなたはもう過去という名前だということ。
あなたが現実に、何をして暮らしていようとも。
懺悔も何も要らない。
過去が持つ口はない。
私にとって記憶の出来事。
脳が繰り返し経験する出来事。


あなたは私と同じように、長年苦悩してこられたろうか。
それとも、なかったこととして、消したろうか。

あなたに聞かせる言葉はもう一生ないだろうと決めて、
あなたにも同じ苦しみを与えたいと願って、強くなることだけを希望に
生きてきた私のように、あなたにも違う苦しみが、長年あなたの夢を
苛んできたのだろうか。

小学校の頃、記憶障害を苛み、男の力に怯え、私はあなたを憎み、
殺したかった。
自分の出来るすべてをもって、抵抗して生きてきた。
夢ではいつも、過去の私のように抵抗出来なかった。
私は長年蝕まれ続けた。

今、あなたは過去なんだと思える。

 私は思い通りに私の手が動くということに感謝をしている。
私が思い通りに私の体を動かせ、私の意志で私を選べることに感謝をしている。
その手に伴侶を招いたことは、私にとって思いがけない幸運だった。


あなた達2名は、幸せになるべきだ。
あなた達ご両親の為にも。
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by otyou0710 | 2011-01-23 16:16 | 雑記

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